グレイプバインはなぜ売れない?名盤・名曲20選振り返り【邦ロックの光について】

バインファン

【グレイプバイン】ってなんで売れないんだろうな?
出すアルバムも全部良いし、神曲揃いなんだけど。

こういった人向けの記事です。10分ほどで読める文章量。

この記事を書いてる人・イチロー

※紹介制度があるサービスは紹介リンクを貼っています。

目次

グレイプバインはなぜ売れない?名盤・名曲20選振り返り【邦ロックの光について】

僕らはまだ、ここにあるさ。/光について

冒頭の動画はグレイプバインの一番のヒット作『光について』のライブ映像だ。

この曲が収録されている2ndフルアルバム『Lifetime』がオリコンのランキングで3位を獲得したのをピークに、それ以降のアルバムではランキング20〜30位前後をウロウロしている。

最初に断っておくが、筆者はグレイプバインの大ファンである。自分が職業PA(舞台音響)になったことに大きな影響を与えているバンドだ。

この記事はグレイプバインの魅力を語る長文になっているのだが、まず冒頭で「グレイプバインが売れない理由」を端的に示しておこうと思う。

グレイプバインが売れない理由
  • 歌詞が難解すぎる(愛の連呼を好むヒットチャートには入れるはずがない)
  • 曲が玄人向けすぎる(グレイプバインの学生コピーバンドは極端に少ない)
  • ライブが自由すぎる(フェスの一曲目で平気で【豚の皿】を演奏したりする)

一見するとネガティブなこれらの要素が全て魅力になってしまうのがグレイプバインというバンドだ。

そのことが、本記事を最後まで読んでもらえるとわかってもらえると思う。

アラフォー・ロキノン世代の筆者にとってグレイプバインはメインストリームに迎合しないクールなロックバンドの象徴だった。

人生を寝違えたように生きているので、振り返ることがとにかく苦手だけど、現在進行形で好きなもののことならいくらでも書ける気がする。

今日はイチローのアイドル“GRAPEVINE”の話。

GRAPEVINE(グレイプバイン)は、ボーカル・ギター・田中和将、ギター・西川弘剛、ドラムス・亀井亨の3人からなる日本のロックバンド。1993年に大阪府で結成。世に知られるようになった時点のレコード会社はポニーキャニオン/ROCKER ROOM。2014年からSPEEDSTAR RECORDS。公式ファンクラブは「BALLGAG」である。

Wikipediaより
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グレイプバインのメンバー・サポート&だーりー

まず最初はグレイプバインってバンドのメンバーの紹介から。

ボーカルの田中さん。イケメン!

ギターの西川さん。ヒットマン!

ドラムの亀井さん。メロディメーカー!

サポートの金戸さんと高野さん。ちょいワル!

最後に元リーダーの西原さん。だーりー!

それぞれのメンバーのイチローの知ってる小ネタ話を書いてみようと思います。

ボーカル・ギター 田中和将

j-wave newsより

グレイプバインのフロントマンの田中和将。セクシーで女性ファンが多い印象だが その生い立ちは壮絶を極めた。 

両親が幼い時に離婚してしまい、田中さんが7~8歳の時母親も失踪。 

育ての親に近い母親の友人夫婦が火災によって死別するなど、 少年にとってはあまりにも大きな不幸に見舞われる。 

幼少期は父違いの兄が日雇いのバイトで田中さんを養った。 

その兄が漫画のドラえもんを読み聞かせてくれたそうで・・

 書籍『書生・田中和将の“とんと、ご無沙汰”』の中で ドラえもんに対する思いを垣間見ることが出来る。

ところで、しずかちゃんやドラミが時々嫌な女に見えてしまうのはおれだけなんだろうか。
そんな時はとても悲しくなります。/田中和将

グレイプバインの魅力として、田中さんの書く芸術性の高い詩が頻繁に取り上げられる。 

”映像の詩人“と呼ばれるアンドレイ・タルコフスキーという映画監督に 影響を多分に受けているようで、『鏡』や『サクリファイス』などその影響を隠そうとはしない。 

サミュエル・ベケットの戯曲の『エレウテリア』や、 サリンジャーやヘミングウェイからの影響を感じられる楽曲もあり文学や芸術への見識は広い。

知識やセンスに裏打ちされた歌詞は、奥行きがあり深読みしていけば 尽きる事がない文学性を持つ国内でも無二の文学生を持つ作詞家である。 

また、その壮絶な幼少期の一端を『少年』という楽曲の歌詞で垣間見る事が出来る。

作詞家として評価される田中さんですが、『アイボリー』『スカイライン』『こぼれる』『ピカロ』『ナポリを見て死ね』『マリーのサウンドトラック』などの作曲も手がける。

個人的にはどのトラックも大好きなモノばかりなので、フルアルバムに毎回2曲ほど収録される田中クレジットの曲はすごく楽しみ。マジ尊い。

Permanents名義の活動も行なっていて、やはりこちらも尊みが深い。

リード・ギター 西川弘剛

Instagramより

田中さん曰く、打率10割の殺し屋のようなギタリスト。人情派サイコパスってことか?

もともとギタリストだった田中さんが、西川さんに出会ってボーカリストに転向した話は有名エピソード。 

ライブでもチューニング違いの楽曲以外はほとんど1本のギターで引き倒すなど、非常に硬派なプレイヤー。

鳴っているギターの音でその人が分かる、現在の日本では非常に貴重なタイプのギタリストだと感じる。

西川さんのギターソロはどのギタリストとも比較しづらい特殊なプレイスタイル。 

ギターを弾いた事がある人なら分かると思うがメロディラインが特殊で運指がギタリストのセオリーではないのだ。 

上げきりたくなることころで上がらず、下げきりたくなるところで下がらないっていうかなんていうか「そこで下げます?!アニキ!」って時もあるし「そこ上がるでやんすか!?アニキ!」って時もある。

深夜に自分の語彙力の低さに絶望している。ブログって難しいな。

まぁ!とにかく!その西川さんのプレイヤーとしての特殊さがグレイプバインの世界観へ多大な影響を与えているのだ。

その他にも、元リーダーである西原さんの脱退後は年長者として セルフプロデュース作品などのイニシアチブをとって制作活動に当たるなど、バンド内でのサウンドへの貢献度は非常に高いと言える。

そもそもグレイプバインは先述した元リーダーの西原さんと西川さんの2人が始めたバンドであったため、 西原さんの脱退の際には他のメンバーよりも非常に悩んだ様子である。

「ベースがいない音楽があってもいいじゃないか。だから残りなさいよ、君は」と発言し、リーダーを引き止めようとしたエピソードはすごく印象的だ。

(3人になっても)続ける意味があるのかと考えたとき、自分一人になった時に僕にどんな価値があるのかなと思って。そういうのを知る意味では正直辞めてもいいかなとちょっと思ったんですよ。/西川弘剛

作曲者としては『(All the young) Yellow』『いけすかない』『放浪フリーク』『羽根』『坂の途中』などのギタリストらしくリフ物の曲から、

『リトル・ガール・トリートメント』『小宇宙』『ふたり』『遠くの君へ』などメロウな曲も手がける。

ドラム・メロディーメーカー 亀井亨

codymoon blogより

バンドのドラマーとしては珍しく、多作の作曲家であり日本屈指のメロディーメーカー。 

ドラム界のエヴァンゲリオンでありガンダムであり国家錬金術師。それが亀井亨。

バインのシングルカット・トラックは亀井作曲の物が多く、田中さんが言うには・・・

申し訳ないんですけど、(メロディのある歌ものは)そこに一任してるようなところがありますね。
いい歌ものはきっと亀井君が書いてくれるだろうっていう(笑)/田中和将

そう語るようにキャッチーな楽曲は亀井クレジットのものが非常に多いのである。 

おそらく大多数のリスナーのグレイプバインの印象は亀井さんの楽曲にあるはず。 

バイナー(グレイプバインの狂信者)の中でよく言われる『亀井節』と呼ばれる素晴らしいメロディーラインに文学的な歌詞と田中さんの日本語英語の歌い回しが重なり、

さらにその上に西川さんの変則ギターが加わったものがグレイプバインの黄金パターンだと勝手に思っている。

亀井さん作曲のトラックとしては、

『アナザーワールド』『Everyman, everywhere』『GRAVEYARD』『smalltown,superhero』『スロウ』『光について』『無心の歌』『真昼の子供達』『Arma』『1977』

などなど、バインの代表曲とされるものが多く存在する。

グレイプバインのサポートメンバー

写真の1番左が金戸さん。右から2番目が高野さん。

この二人は長い期間、ほとんどメンバーのような形でグレイプバインに携わっている。

正式にバンドメンバーにならない理由としては「その方がみんなフレキシブルに活動できるから」だそうだ。

ライブの映像やDVDなどの特典映像を観ていても、完全にグレイプバインの一部のように感じられる。

近年のバンドの傾向である『Silverado』『Sing』『KOL』『Empty song』などのセッション曲は、この2人無しには完成しなかっただろう。

過去メンバー・バンドリーダーの西原誠

バインは元リーダーの西原さんが繋いできたバンドだ。

初期メンバーとしてバンドの原型を作ったり、メンバー集めが難航していた時期にも粘り強く勧誘を行って亀井さんを見出した。

結成当時、やさぐれてバンドから失踪した田中さんを大人の包容力でバンドに連れ戻した功績も大きい。

この人がいなかったらグレイプバイン自体が存在も存続もしなかったことを考えると、超重要人物であることは明白。

このバンドを語る上で避けて通ることができない人だと言える。

作品の面でも初期のグレイプバイン特有の絡みつく様な粘っこいベースラインなど、バンドサウンドのアイデンティティに貢献。

ちなみにデビュー前はメンバーで唯一正社員として働くなどマジメだっただーりー。

そのためバンドの練習が深夜2時から行われるなど、他のメンバーからのブーイングが多かったのがちょっと笑える。

脱退理由だったジストニアも落ち着いて今は自分のバンドで活動しているが、グレイプバインに戻ってくる気配はない。

人間が一緒にやっていくってのは、お互いが愛せる距離を探ることでもあるから、バインとダーリーの距離感はこのくらいがちょうどいいのかもしれない。

ライターとしては『JIVE』『空の向こうから』『望みの彼方』など初期の名曲の作曲者としても活躍した。

グレイプバインの全アルバムを時系列順に紹介

メンバーの紹介も済んだので、こっからはグレイプバインのオススメ楽曲を紹介してみたいと思います。

グレイプバインはバンドを始動させてからというもの、ほとんど毎年のようにツアーとフルアルバムのリリースを行なっているものすごいストイックなバンド。

ってことで作品数も多いけれど、できれば木漏れ日あふれるデイサービスの片隅で余生を過ごすくらいの感覚で読んでみてほしい。

1stミニアルバム「覚醒」

グレイプバインのルーツである『覚醒』。泥臭いギターリフで展開していく異色のデビューアルバムです。

当時は『オアシスよりブラー』という空気感がバンド内にあったそうでよりローファイなサウンドを意識して制作された作品です。

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1stフルアルバム「退屈の花」

1stフルアルバムの『退屈の花』 収録の『君を待つ間』

まさにグレイプバインの王道曲。良メロにのった田中さんのハイトーンボイスが心地良い。

この頃の歌い方と現在の歌い方を見比べても面白いかも。

自分は初期の少年のような佇まいの田中さんもすごく好き。

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2ndフルアルバム「Lifetime」

2ndフルアルバム『Lifetime』から『望みの彼方』

数年前にこのLifetimeの再現ライブもありました。

商業的に1番成功したアルバムという点に加え、2ndアルバムにして高みに到達してしまった和製ロックの金字塔的な作品です。

アルバムを通して『スロウ』や『光について』など、シリアスな人気ナンバーが並び、非常に重厚な内容になっている印象。

後半の『望みの彼方』など各楽曲のクオリティから、明らかにバンドブームで出てきた量産型のバンド達と一線を画していることが分かる。ロックをシリアスとセンチメンタルでハイパー進化させた。ヤヴァすぎ。

1999当時はmuseの『ショウビズ』やレディオヘッドの『OKコンピューター』などシリアスな内容の洋楽が盛り上がっていて、その辺の感度の高いリスナーにバインは下支えされていた印象です。

シガーロスとかモグワイとかもその頃デビューだったのでその辺の層も入ってた感じかなぁ。

あまり公言はしていないけど、レディオヘッドにはメンバー全員かなり影響を受けているんじゃないかと思っています。

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3rdフルアルバム「Here」

3rdフルアルバム『Here』から『here』

グレイプバインはアルバムにタイトルチューンのトラックが入ることは珍しい。

そんなわけで、アルバムの実質的なラストを飾っている『here』をここでは参考動画として載せています。

三拍子ミドルテンポのメロウな曲ですが、ギターが幾重にも重なって音の洪水のようなアンサンブルになっている。

アルバム1曲目の『想うということ』とミックスが似ていてコンセプトアルバムのような統一感を作品全体に与えています。

こんな風なディストーションギターのアレンジは、まもなく出てくるバンプ・アジカン・エルレなどのギターロック勢に引き継がれていくことになる。

メインアーティスト:GRAPEVINE
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4thフルアルバム「Circulator」

4thフルアルバム『Circulator』から『lamb』

このアルバムも『風待ち』『ふれていたい』など人気曲が多いですがここでは個人的に大好きな『lamb』を選んでみました。羊ちゃんが大好きです。ぜったいこのアルバムはこの曲だと思う。

歌い出しから綴られる田中文学ワールド全開の世界観。

田中さん本人の「感覚で捉えて欲しい」との言葉通り、意味はさておきその言葉選びのセンスにただただ感動した記憶がある。

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5thフルアルバム「another sky」

5thフルアルバム『another sky』から『Colors』

西原さんがグレイプバインに関わった最後のアルバムになったこのアルバムは当時はファンの間では賛否両論の作品でした。

フランスの作家のモーパッサンから影響を受けたであろう『マダカレークッテナイデショー』などのロック曲も多少入ってはいるが・・

いわゆるギターロックというジャンルから大きく離れ、その結果『Colors』や 『それでも』や『アナザーワールド』『マリーのサウンドトラック』『ふたり』といった、田中さんの文学世界が色濃く出た楽曲が多数を占めました。

『風待ち』のアンサーソングとして扱われている名曲『ナツノヒカリ』も収録。

このアルバムも古臭さを感じない名盤ですね。

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6thフルアルバム「イデアの水槽」

6thフルアルバム『イデアの水槽』から『豚の皿』

「バイン絶対カッコいいから観にいこ」と友達を連れていったフェスのステージでこの曲を演っていたグレイプバイン 。立ち尽くす友達の姿が忘れられない。

「大ヒット曲」とMCしていたけど、この曲の後の客席はものすごい雰囲気になってましたよ。夏フェスでどんだけ攻めるねんグレイプバイン 。

話を戻すと、このアルバムの『豚の皿』はRadioheadの『Paranoid Android』の影響を感じるし、アルバムのラスト曲の『鳩』は『There There』の影響を感じる。

なんだかんだ言いましたが、個人的にはかなり大好きなアルバムなんです。

当時のツアータイトルが『沈黙の臓器』だったり、作品全体に漂う不穏な空気が次世代のロックを感じさせた印象的な作品。

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2ndミニアルバム「Everyman,everywhere」

2ndミニアルバム『Everyman,everywhere』から『Everyman,everywhere』

このアルバムはインタビューなどでメンバーには「地味なアルバム」などと表現されていました。

確かに作品の世界観のベクトルが内向きになっている時期の作品ではあります。

この頃、田中さんに2人目のお子さんが誕生したそうで、アルバム収録の『スイマー』のインタビューでは「長男を水泳部に入れたくなった」と語っていました。

田中さんのこの頃の発言としては他にも「子供を通して自分の少年時代を思う」とか、「育児を通して自分も2度生き直している」とか「育児は俯瞰を助けてくれる」などと語っています。

この辺の発言を自分なりに考えれば考えるほど、『Everyman,everywhere』はミニアルバムというボリュームながら、実はグレイプバインの世界観の移り変わりを知る上では重要な時期の作品である気がしてくる。

田中さんがライブ中に感極まって泣きながら歌ったのは『Everyman,everywhere』だけしか俺は知らないから、なんだか深読みしたくなる作品ではある。

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7thフルアルバム「déraciné」

7thフルアルバム『d e racin e』から『スカイライン』

田中さんは文学方面からの受けた影響も強そうですが、この『スカイライン』のようにアメリカという国の泥臭い風土への強い憧れを感じられる曲もたくさんあります。

そのためこのような曲に関しては難しい語句は用いずに、楽曲に対して余白をうまく使っている印象です。詰め込まない感がカッコいい。

そう言えばwilcoなどUSバンドからの影響を徐々に感じるようになる時期でもあったかもしれない。

参考動画は『ママとマスター』ツアーの最終公演につじあやのちゃんが来た時の映像。あやのちゃんカワイイ。

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8thフルアルバム「From a smalltown」

8thフルアルバム『From a smalltown』から『smalltown,superhero』

『From a smalltown』も『指先』や『スレドニ・ヴァシュター』

『ランチェロ`58』『棘に毒』など名曲揃いですが・・・

やはり『smalltown,superhero』を選んでみました。説明不要の名曲中の名曲。ほんとすき。

加えて記事の冒頭でも紹介した田中さんの生い立ちを象徴する作品『ママ』も収録されています。 歌詞がすごいから、ファンの人は一度ちゃんと見てみることをオススメします。

ちなみにアルバムの1曲目の『FLY』はグレイプバインにとって初のジャムセッション曲。

バンドにとっては割りと大きなターニングポイントになったアルバム。

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9thフルアルバム「Sing」

9thフルアルバム『Sing』から『ジュブナイル』

『Sing』もシングル曲が4曲も収録されている豪華なアルバムです。

その中でもリリース時期に合っていた『ジュブナイル』を選びました。

夏を思わせる様な疾走感溢れるメロディアスな楽曲です。

シングル曲ではないけれど『Glare』もライブで頻繁に聴けた人気の高い名曲。

田中さんが「光」というワードを使うことで楽曲に何故ここまで重みが出るのだろうか。

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10thフルアルバム「Twangs」

10thフルアルバム『Twangs』から『小宇宙』

チェロと田中さんの弾き語りという珍しい構成の楽曲です。

この曲を含め『フラクタル』など内向的な名曲が揃いますが、グレイプバインとしては初の全英詞の曲が入ったりもしている。

この頃のアメリカでのライブ出演の影響を感じるアルバムです。

ちなみにタイトルは「(ギターを弾く時の)ブーンと鳴る音」という意味がある。

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11thフルアルバム「真昼のストレンジランド」

11thフルアルバム『真昼のストレンジランド』から『真昼の子供たち』

グレイプバインが上り詰めた高みに『真昼のストレンジランド』がありました。

日本国内を代表する名盤中の名盤。鮮やかなジャケットがとても素敵だ。

楽曲たちはロングショットで見ると、不思議な国のワンシーン。

クローズアップで見ると、いろんな人たちがいる。いろんな風景がある。空とか木とか風とか海が、ほんとうに自然にそこに、ある。

アルバム全体がコンセプチュアルにまとまっていて、全体を通して1つの景色を見ることが出来る作品に仕上がっています。

ツアーの時の田中さんの「ストレンジランドへようこそ」がすごくかっこ良かったなぁ。

『Silverado』『Dry November』『ピカロ』『風の歌』名曲揃いですし・・・

『This town』なんかはグレイプバインの新章の幕開けを感じずにはいられない、アメリカンライクなナンバーです。

このアルバムを聴いて新しくファンになった人も、ずっとファンで良かったと思った人も多いのではないでしょうか。

歌詞の面で言えばこの頃から曲に空白をあえて差し込こんで、センテンスに含みを持たせる方式が多くなってきた様に感じます。

セッション曲が増えてきたことに関係するのかもしれません。

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3rdミニアルバム「MISOGI EP」

3rdミニアルバム『MISOGI EP』から『MISOGI』

『MISOGI EP』は全て亀井さん作曲の全6曲ミニアルバムです。

ルーツロック全開の『MISOGI』で身を清めて『RAKUEN』としてのエデンに到達するあっという間の26分。

初回限定版のシングル『EAST OF THE SUN』に付属しているDVDに『YoroI』のスタジオライブが収録されているのですが、

これもめちゃくちゃカッコイイので機会があればぜひぜひ。

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12thフルアルバム「愚かな者の語ること」

12thフルアルバム『愚かな者の語ること』から『片側一車線の夢』

このアルバムのリード曲としては『1977』や『無心の歌』『なしくずしの愛』など「らしい」曲は多いのですが、

グレイプバインには珍しい、底抜けに明るい『片側一車線の夢』をここでは選んでみました。

同じカントリーな曲調の『スカイライン』とはまた違い、通り過ぎてきたあらゆる闇を受け入れて、次のステージへ向かう大人の決意が等身大で語られています。

13thフルアルバム「Burning tree」

13thフルアルバム『Burning tree』から『KOL』

田中さん曰く「ありそうでなかった感じの曲」とのこと。

『Burning tree』はそのクオリティと発想性の高さから、グレイプバインというバンドの現在地が常にピークであるという証明になった作品です。

1曲目の『Big tree song』からバンド自体のスケールアップが伺えますし、『KOL』『Empty song』などのグレイプバインのナチュラルなバンドサウンドの良曲はもちろん健在。

そのほか『Weight』『アルファビル』『サクリファイス』などの憂いを表現したトラックの世界観は国内のバンドの中において唯一無二の存在感を放っています。

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14thフルアルバム「BABEL,BABEL」

14thフルアルバム『BABEL, BABEL』から『SPF』

デヴィット・ボウイの『“Rebel Rebel”』をオマージュしたアルバムタイトル『BABEL, BABEL』からは『SPF』を選んでみました。

田中さんは歌詞作りについて、近年この様に語っています。

「もうええやろ、こういうのは」ってね。たとえば歌詞を書くときでも、
「本当はこれ以上言葉を書きたくないのに、2番のBメロがあるから埋めなあかん」
みたいなのはどうかなって思うんですよ。/田中和将

リードトラックの『EAST OF THE SUN』で幕が開ける作品は『SPF』でセンチメンタリズムのピークを迎えます。

『Heavenly』『UNOMI』のような近年得意としているアンビエントな楽曲に加えて、

プライマルスクリームよろしく『EVIL EYE』やインダストリアル感が痛快な『HESO』 など良曲揃いの名盤です。

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15thフルアルバム「ROADSIDE PROPHET」

「ずっと出たとこ勝負でやってきたので。結局は曲次第ですからね」と田中さんが語るように、記念すべき20周年目のフルアルバム『ROADSIDE PROPHET』はセルフプロデュース作品になった。

リードトラックの『Arma』は管楽器フューチャーのグレイプバインには珍しい一曲。

TWANGSで見られたようなリードチェロを使った『これは水です』や、マリンバを積極的に使用した『ソープオペラ』など、バンドのゾーンが広げようとする、攻めの姿勢が感じられる一枚。

自由度を上げ、ロックを超えてしまったグレイプバインは、どこへ向かうのだろうか?

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16thフルアルバム「ALL THE LIGHT」

ホッピーさんから「エレキギターの弾き語りを作って欲しい」というオーダーがあったので、これはちょうどいいぞ、と。/田中和将

16thフルアルバム「ALL THE LIGHT」からは、グレイプバインには珍しいエレキギター弾き語り曲の【こぼれる】を。

曲が終盤に差し掛かるにつれてどんどんカオティックになっていく様は、構成・曲調ともにエキセントリック。それでいてメロと歌詞は秀逸。

これだけキャリアを重ねているバンドに、ここまで新鮮さを感じることがあるのか、と度肝を抜かされた一曲。

グレイプバインは「光」というワードと一緒に扱われがちだけど、20年以上の時を経て、「光」との付き合い方も変わってきたみたいだ。

最初に【光について】を聴いた時は、なんだろう、どうしようもなくたまらなくなってしまったものだが。

このアルバムの最後を飾る【すべてのありふれた光】を聴き終わった時、当時の、ライフタイムの頃の自分を受け入れられるような、許せるような。

今までグレイプバインが表現してこなかった、希望みたいなものが、「光」に含まれている気がしてくるのだ。

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17thフルアルバム「新しい果実」

僕らは大丈夫だったんですけど、ライブのスタッフは仕事がなくなってしまって。僕らが動くことで彼らにも仕事が生まれるから、その責任みたいなものは感じてました。/西川

前作「ALL THE LIGHT」から約2年ぶりのリリースになった「新しい果実」からはコロナ禍の社会をモチーフにした【ぬばたま】を。

メンバー5人が集まって、セルフプロデュースによって制作された17枚目のアルバムも、グレイプバインのスタンスをより一層際立たせるエッジの効いた作品になった。

サブスク時代になってイントロがなくなってるという話もありますけど、知ったこっちゃないんで。曲によりけりですからね、それは。/田中

退廃感なドラムサウンドのどギツイイントロから始まる「Gifted」や、バイン節炸裂の「居眠り」、先行シングルとしてリリースされた「ねずみ浄土」「目覚ましはいつも鳴りやまない」の二曲に加えて、良メロ曲「さみだれ」、一聴した者が目を逸らすことを許さない「ぬばたま」・・・

より突き詰められたバンドサウンド以上に、奔放なアイデアや、既存の音楽業界の枠にとらわれない名曲が1つになった充実のフルアルバムになっている。

アルバム・マスタリングはデヴィッド・ボウイの遺作(「★(ブラックスター)」)を手がけたジョー・ラポルタ。

歌詞もそうだけど、サウンド面の情報を精査しているだけでも、バンドがどの方向に進もうとしているのかが、なんとなくわかって面白い。

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18thフルアルバム「Almost there」

曲調をメインに曲順は決めてることが多いんですけど、こう聴くと歌詞もちゃんと繋がってる。うまくいってるなあ。これは、多様性のことを歌うつもりなんかなかったんですよ。/田中

18thフルアルバム「Almost there」からは【停電の夜】を。

前作の新しい果実から繋がっている歌詞が多く、ファンは思わずニヤリとしてしまう。

オールドロックあり、シティポップあり、ラップあり、メロウな曲ありと、バンドの引き出しの多さに驚かされる。

歌詞はやはりというかなんというか、抽象的なものが多いけれど、物事って真実に近くに連れて抽象的になるっていうし、

田中さんの描く芸術が、どんどん心理に近づいている雰囲気を感じる快作です。

個人的には雀の子も豚の皿っぽくて大好き。

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グレイプバイン・邦ロックの光について考察【まとめ】

ここまで自分なりにグレイプバインの楽曲を考察してきました。思いのほか長文になってしまってブログを書き始めて初めて10000字を超えてしまった!

すごい!書こうと思えば書けることがわかってちょっと感動しています。

そういえばこの文章を書いていく中で、田中さんが自身の歌詞の作り方について語っている記事を見つけました。

(歌詞のメッセージ性を)わかりやすく提示したくはない。
だからこそ、こういう歌を書いているんだと思います。
自分のスタンスを示さないのはずるいのかもしれないですけど、そもそも、昔からプロテストソングというのはそういうものだと思うんですよ。
あくまでも聴き手が広げるものだと思いますしね。/田中和将

と、言う事ですのでグレイプバインの世界観を理解するにはわたしたちリスナー側にも、ある程度の理解力・読解力・ボキャブラリー・人生経験が必要になってくるのでしょう。

年を重ねてから『LIFETIME』の再現ライブを演ったのもそういう意図があるのかもしれませんね。

最後になりましたが、バンド名の由来はマーヴィン・ゲイの”I Heard It Through The Grapevine”からとったものだそうです。

そのままの意味は「葡萄のつる」。

「よくない噂」という意味もあって、それを”拡散したい”という意味の持たせ方をしていると”circulator”のインタビューの時話していました。

今日はこんなところで。大好きなバンドに敬意と愛を込めて。

長文に最後まで付き合ってもらって、ありがとうございました。

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