- スズキイチロー(36)
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ディアンジェロの凄さとおすすめ曲6選・伝説の考察【星野源も大好き】
こんばんは。PA(舞台音響)ブロガーのイチローです。
これを読んでいるあなたは、ディアンジェロを知っているでしょうか?いえ、質問を変えてみよう。
わたしに教えてほしい。ディアンジェロとは、いったいなんだったのだろうか?
広島の助っ人外国人とか、黒人演歌歌手が浮かんでしまった人。それはディアスかジェロなので。いったんそこに置こうか。ディアスとジェロのことはいったん忘れようか。
そのどちらとも関係のない『ディアンジェロ』とは文字通り。本当の意味で。唯一無二のアーティストである。
その唯我独尊感をイチローが肌で感じたのが2014年。全世界の音楽ファンとメディアが震えに震えた西野カナ。
???
当時その熱狂の外にいた人間…ディアンジェロの伝説の2ndアルバムVoodooを理解していなかったイチローからすれば、あまりに謎めいた熱狂だった。
「みんななんだかディアンジェロって言うけどさ~なにそれおいしいの?」ってなもんである。頭カッパカパ。お肌ピッチピチの20代。
そのディアンジェロのニューアルバム、ブラック・メサイアの発売直後は著名人も大盛り上がり。
はしゃぎまくりラクリマクリスティーの滝川クリスティからのクリス松村って感じ。
ラクリマクリスティーや滝川クリスティがディアンジェロを好きなのかどうかは全く伺い知らぬところだがクリス松村はたぶん好きだと思う。
アリシア・キーズが「VIBES ! 最高!」と叫んだ。ジャスティン・ビーバーが「彼の新譜を聴き込みたいから探してくれるな」と呟いた。どうなってんねんディアンジェロ。その衝撃。太平洋を駆け抜けてる。
日本のアーティストだって例外じゃない。星野源はアリーナ公演にて早速ブラックメサイアをBGMにしていたし、志磨遼平も「スノッブ万歳ですよこんなの」という独特の言い回しで祝福する。西野カナにいたっては会いたくて(ry。どういうことやねんディアンジェロ。その奇跡。東洋の神秘になってる。
みんながみんな「あのディアンジェロが……!!」って言って騒いでる。近所のCDショップでもブラック・メサイアは売り切れだった。このご時世に発売初日に小売店で売り切れになっちゃうCDってすごい。信じられない。
太平洋を駆け抜けた東洋の神秘は、日出る國にて伝説となった。まさにR&B界のアントニオ猪木。
イチローの中では、ヤマタノオロチとアントニオ猪木の神々しさレベルはほぼ同等だ。力道山の立ち位置は創造主だろうか。
でもさ…これだけディアンジェロが評価されるキッカケになった伝説の2ndアルバム。Voodooのリリースは1999年。さすがのわたしも当時はまだ小学生。
今でこそ、その名盤の凄さの片鱗くらいは理解できそうなものだけど、毛も生えそろっていない当時のイチローにはあまりにも黒すぎる音楽。ドッロドロのブラックミュージック。
早い話が理解できんかった。っていうか海外の曲なんか知らんかった。ビビアン・スーが俺の限界、ブラックビスケッツ万歳。黒い音楽はこのころから好きだったみたいだ。
つまり今回の記事は2014年当時の『ディアンジェロ、新譜出すってよ騒動』にいまいちピンと来なかった人向けに書いてみようと思う。イチローが当時の自分を迎えに行くための記事。
ディアンジェロ。その特別なアーティストは一聴しただけでは理解できない、底の見えない奥深さがある。
1度目はそこに闇があることだけが理解できる。2度目はその闇が奥深いことがわかる。3度目以降はその闇深さの解像度だけが上がっていく。
もうすでに沼に入り込んでいることに気付く。絶対に逃れることができない。他に似たような音楽がないからだ。
これだけドロドロした音楽が、よくもまぁ、全世界に受け入れられたものだ。地球人は全員ネクラなのかもしれない。
15年だよ?待てる?永遠の愛も枯れ果てるぜ15年。
今日はそんな、全世界を焦らしに焦らした罪深い男。ディアンジェロについて書いてみようと思う。
ディアンジェロ(D’Angelo、本名:マイケル・ユージーン・アーチャー、Michael Eugene Archer、1974年2月11日 – )は、アメリカ合衆国バージニア州リッチモンド出身のシンガーソングライターである。
リッチモンド南部で宣教師の息子として生まれ、幼少の頃から歌い始めた。
wikipediaより
ディアンジェロの概要
最初は簡単にディアンジェロの概要みたいなものを。
世代的にはダフトパンクの2人と同じ40半ばくらい。アメリカのヴァージニア州生まれ。リッチモンドっていう州都で育ったんだけど、そこは南北戦争時の重要拠点だった。今でも戦禍が残る地域として知られている。
ディアンジェロが生まれた当時は全米でもトップクラスの犯罪率で知られた、治安の悪い地域だった。
企業の研究施設が多数あるくらいで、歴史的にみても音楽的なトピックは特にない場所で幼少期をすごす。
北関東の山間部で育った筆者とそれほど大差ないように思える。
父もじいちゃんも牧師だったディアンジェロにとって教会ってのはとても身近な場所で、そこでピアノの演奏を始めたのが音楽に触れたきっかけだった。
12歳の頃には学んでいた音楽理論の教師に「君に教えることはすでに何もない」と言わしめるほど音楽に熱心に取り組む少年で、この辺の話が現在のマルチプレイヤーぶりに反映されているように思える。
同世代の黒人の多くの若者と同じように多感な時期をヒップホップというジャンルに取り憑かれて育ち、その中で地元の親戚たちとバンドを組む。
そのバンドはJBのホームとして有名なアポロシアターに出演し、当時より好評を博していた。
JBって誰?って人がもしいるのであれば「ウンゥゥゥ~~~!」であり「ホォォァーーアッッッ!?」である。
詳しくは動画で。
リスペクトしているミュージシャンに、マーヴィン・ゲイやプリンスを挙げることが多く、黒人ルーツの音楽がディアンジェロの基盤になっている。
とはいえ自分自身も多数のミュージシャンからリスペクト・ミュージシャンに挙げられ、大衆におもねらない音楽ジャンルでありながら日本においても巨大ホールを客で埋め尽くす。
ディアンジェロの芸術性は筆舌に尽くし難い。”ひつぜつ”って初めて言ってみた。言いづらい。
そして1995年。若干21歳の若さでR&Bの名作『ブラウン・シュガー』を発表。ソロアーティストとして黒人ルーツ音楽の新しい境地に踏み込んでいく。
ディアンジェロが受け継いできたその流れは、マクスウェルの『Urban Hang Suite』、エリカ・バドゥの『Baduizm』、へ繋がり、「ネオソウル」と呼ばれるムーブメントの源流になった。
その後、その音楽性をさらにコンテンポラリー方面に進化させたディアンジェロ。
70年代のサウンドとネオソウルを融合させ、実験的かつ突然変異性が話題になった名盤『Voodoo』を発表。これが1999年。
プラチナム・ディスクにグラミーを2部門受賞。結果論だけど、この2ndの発表から3rdの発表までに、実に15年もの歳月を要することになる。この3rdが冒頭に書いたブラックメサイア。
途方もない時間だ。2ndが名盤すぎて八百万の神が宿りすぎて、宝船が転覆してしまった感じかもしれない。
新作がないのにこの15年の間。ディアンジェロの才能についての議論が止むことはなかった。
もうそのこと自体が意味わからんくらいすごい。
『Voodoo』が凄すぎたのだ。凄すぎて15年間も人気が持続してしまったわけだ。
凄すぎるわ。具体的にいうとめっちゃ凄い。この記事を書き終わるまでに、たぶんあと30回くらい凄すぎるって言うと思う。語彙力。
満を辞すぎな感じで発表された『ブラック・メサイア』が発売されたのが2014年。
当時のアメリカはファーガソン事件を発端に黒人の人権問題について議論が加熱している最中だった。
そんな中アナウンスされたディアンジェロの帰還。黒人のヒーローの復活はアメリカ中で熱烈に歓迎された。
ブラックの力強さを表現したアートワークからもわかるように、それはまさに黒人としてのディアンジェロの”声”そのものだった。
(実際にブックレットには本人の声明が添えられている)
なぜ新作の発表に15年もの時間を要することになったのか?って話も少ししておこうと思う。
一言で言えばディアンジェロは『Voodoo』の圧倒的な成功に飲み込まれてしまったのだ。
大衆にセックスシンボルとして扱われること。パパラッチの存在。近しい友人の自殺とレコード会社との確執。
アルコールによる自動車事故やドラッグを発端とした傷害事件。彼女との別れに親族との決別。
変わってしまった自分を取り巻く環境に必死に追いつこうと、酒やドラックに溺れる毎日。理想と現実の距離を埋めようと酩酊する日々。
刑事事件を起こすようになるころには、筋肉質な体すらもすでに失われてしまっていた。
そのような長い期間トンネルの中をさまよい歩いていたディアンジェロが立ち直るキッカケになったのは盟友J・ディラの死だった。(nujabesの記事の時にもチラッと書いた)
『Voodoo』って作品は、実はJ・ディラからの影響が少なくない。
ディアンジェロは盟友の死に大きなショックを受け、それが結果的にあらゆる更生への道を歩みだすキッカケになった。
この辺の話もなんだか人間くさくてすごくディアンジェロらしい。
ブラック・ミュージックってトレンドがあまりに速いし、すごく資本主義的な考え方が根付いてるイメージがあるから余計にそう思うのかもしれない。
このようなディアンジェロの人間的な弱さなんかは、彼の音楽を聴くときポジティブに響くことに気付く。これは個人の主観による意見だけど。
そんなこんなな紆余曲折を経た挙句、クエストラヴら仲間達の助けもあってようやく第一線に帰ってきたディアンジェロ。
ほんと。長年のファンからしたら、おかえりって感じだったろうな。
ディアンジェロとプリンスの関係性
冒頭でも述べたように、ディアンジェロは絵に描いたような”ミュージシャンオブミュージシャン”である。
突然変異的でありながら、圧倒的な探究心に支えられた経験と知識を織り交ぜたスタジオワーク。それらを実践できるライブで彼の音楽は完璧な肉体を得た。
ディアンジェロには足りないものがない。優れている。圧倒的に完成している現代のブラックミュージックの正当な継承者だ。
ここで考えさせられるのは、誰がディアンジェロにそのバトンを渡したのか?ということだ。
この疑問を考えたときにプリンスの名前が出てきたとき、異議を唱える人間はたぶんいないと思う。
もちろんプリンスにバトンを渡したのはジミヘンなのだけれど。
あらゆるインタビュー記事などから分かるように、相思相愛の関係性にあるディアンジェロとプリンスだが、ディアンジェロにあってプリンスにないものがある。
これは時代背景という要素も大きいと思うけれど、ヒップホップへの理解の深さってものがディアンジェロの特徴だと思える。
今改めてプリンスの音楽を聴いてみると、やはりヒップホップ色を感じる曲はあるにはあるが…なんつーか、こう。”自分のものでない感”が強い。
プリンスはもちろん素晴らしいミュージシャンだけれど、やはりヒップホップを自分の内面世界にまでは持って行かなかった印象がある。
とはいえディアンジェロの肉体がヒップホップ主体だったとしても、先に述べたようにそれは世代的な意味合いが強いのだろう。
そんなディアンジェロの音楽は、ヒップホップというジャンルで踊っていた俺たちの世代の心を掴んだし、なによりも”ドロドロした生々しいブラックミュージック”ってやつを2000年代の音楽シーンに繋げて見せた。
お互いに影響を隠そうとしないふたりだから、ディアンジェロの15年ぶりの新作が出るときにでもプリンスは頻繁に引き合いに出されていた。
裸で歌うMV(アンタイトルド・ハウ・ダズ・イット・フィール)もそうだし、歌いかたやコーラスワークは、今考えてみるとどこからどうみても殿下の影響が色濃く出ていたと感じる。
ふたりとも、名だたる有名ミュージシャンが下を巻くほどのマルチプレイヤーぶりで知られているし、それでいてわざわざ大所帯のバンドを結成して大規模なツアーを計画するなど、ミュージシャンとしての共通点は多い。
(レヴォリューション、ザ・ニュー・パワー・ジェネレーション、ソウルトロニクス、ヴァンガード)
管楽器以外の楽器がぜんぶプロ級の腕前ってどんだけやねん。ぶっ壊れチート星5つなふたり。これだからプロは困る。
プリンスのサウンドはかなりロックよりだ。メロディーもグッとくるものが多い。それでいて革新的で実験的だった。
その点やっぱりディアンジェロはヒップホップ色が強い。メロディーは閉鎖的だ。密室のコンテンポラリー。お互いにマルチプレイヤー だが、このあたりの印象からして使用している楽器や機材がかなり違うことが分かる。
ただそのディアンジェロの密室性も殿下の「パレード」や「サイン・オブ・ザ・タイムズ」などからの影響だと言われてしまえば頷くほかない。
つまりは単純にこのふたりの音楽性の違いは「ヒップホップ色の配合率」で大抵の説明がつくのではないのだろうか?怒られそうだけどイチローは素直にそう思ってしまうのだった。
プリンスがロックと共に武器にしていたもの。それはファンクだ。
80年代。ファンクを取り扱うことの難しさと戦いながらも、時代を気にせず好きな音楽をやっている殿下はすごくキラキラして見えた。
そんなブラックミュージックの自由度の高さは、間違いなくディアンジェロに受け継がれていて、その精神は現在進行形で多くのフォロワーに影響を与え続けている。
このあと、ディアンジェロが新しいアルバムを出すのかは誰もわからない。
今度は20年かかるかもしれないし、もうアルバムという形での作品の発表はないのかもしれない。
でもこんな風に歴史は続いているのだ。彼らふたりの音楽が人々の記憶からなくなってしまうことは、決してない。
ディアンジェロの15年ぶりのリリースのあと、すぐに殿下は旅立ってしまった。ディアンジェロは「スノウ・イン・エイプリル」を歌った。
プリンス。俺たちの殿下。おつかれさまでした。安らかに。
ディアンジェロのおすすめ曲6選
ここからはディアンジェロの伝説的ともいうべき3つのフルアルバムを紹介してみようと思います。
まぁ…その中でもとりわけ別格に扱われる2nd-Voodooに関してすらもイチローは2000年当時、まったく知らなかった。
そもそも小6の田舎の童貞小僧が「ディアンジェロの2ndマジ良さみ深すぎ」なんて思ってたら逆に怖い。
ってことでそんな過去の自分を迎えに行ってみようと思う。まずは1stアルバム「Brown Sugar」について。
1st・Brown Sugarからのおすすめ曲
1995年発売のディアンジェロの1stアルバム-Brown Sugar。
革新的と言われた2ndなんかに比べてもシブめのメロディのものが多く、まだまだソウル色が色濃く出ている。ルーツ音楽というかなんというか…ディアンジェロ自身のR&Bの決算というかなんというか。そんな感じ。
歌詞の内容もイデオロギーを帯びたものはあまりなく、愛とか恋とかそんな感じのリリックだし、酒の肴にもってこいのアルバム。ビールよりウイスキーよりブランデーみたいな作品。伝わるのかなこれ。
演奏・制作の面でも、すでにディアンジェロ自身が務めるなどデビュー当時からそのマルチぶりはしとどにダダ漏れ状態で発揮されている。
実は発売当時、商業面での成功はあまり期待されていなかったこの作品。
しかしリリースからジワジワ売れ始めて、発売から1年後、最終的にビルボードのR&Bチャートの4位にまで上り詰める。
しかもその後、通算54週間にわたってチャートインし続けた”スルメ・オブ・スルメ”みたいなCD。
結果的に200万枚以上世界で売れちゃったし、プラチナムも獲得。
さっきのプリンスの項でも書いたけれど、全体を通してのロック感はほとんどない。フューチャーされている楽器は主に鍵盤だ。
アタックのない鍵盤がメロディを担って、アウトラインをエッジの効いたベースやドラムが象っている。
エンジニアとして聴くと、すごく繊細な印象を受ける反面、音楽好きとして聴くとドスの効いたノリの良さを感じる。絶妙だ。
コーラスワークもモータウンアーティスト直系って雰囲気で、歴史の継承者って感じがしてくる。
力強いのに繊細に折り重なっていく声が美しい。めっちゃスモーキー。ディズニーフードで言えばターキーレッグ。
妖艶で怪しげな雰囲気がえげつないほどオシャレ。これは誰にもマネできんわ。
このようにディアンジェロってアーティストは、デビュー当時より無二の存在だったことがだんだんわかってきた。
2nd・Voodooからのおすすめ曲
はい。次は2nd。問題のVoodooですね。2000年に発表された言わずと知れたレジェンド・アルバムです。
ビルボード1位。33週連続ランクイン。大ヒット・スルメアルバム。音楽界のダイオウイカ。
今回はプロデュース全般も自身で行うなど、スタジオワークにのめり込んでいた時期の作品。
1stに比べて顕著なのが、リズム。プリンスに倣いファンクを周到したトラックが多い印象で、めっちゃグルーヴィー。グルーヴィーも初めて言ってみた。ちょっと恥ずかしい。
歌詞の内容的には、霊的なものからセクシャリティなものまで多岐に渡るようになり、ディアンジェロ自身のイデオロギーが如実に楽曲に反映されるようになってきた作品でもある。
このVoodooって作品のリズムの要になっているのが、ドラマーのクエストラブ。
もともとデビュー以前よりセッションを通じて仲良しさんだったみたいで、1stに比べてもバンド色が強い印象に仕上がっているのは、タイコの存在感がすごく大きいと思う。
ベースはピノ・パラディーノだし、本当にリズム隊は鉄壁の布陣。なんて真田丸?
ディアンジェロは自分のイメージを言語化し、伝え、それを実現する一流ミュージシャンたち。どんなマイケル?
いわゆる「もたるビート」とか「揺れるビート」みたいな表現をされやすい楽曲が多くて、それもこれもみんなディアンジェロの指示によるもの。
基本的にリズム隊って人種は、メトロノームとかクリックを聞きながら日々鍛錬をしている人たちなので、この辺の要求に応える難しさは想像に難くない。メンタル面でも。フィジカル面においても。
先に述べたように商業的に大成功したこの作品によって、ディアンジェロは一夜でセックスシンボルに祭り上げられてしまうことになる。
2000年当時、音楽を流通させる手っ取り早い手段は、刺激的で攻撃力のあるミュージックビデオを作ることだった。
資本主義社会は、ディアンジェロの魅力溢れるトラックたちと鍛え抜かれた肉体を、市場を満たすコンテンツとして扱った。
性的なパフォーマンスどうこうよりも、文字通り世界の前で丸裸にさせられたディアンジェロは、セックスシンボルとして扱われ続ける自分自身に、長い期間苦しめられることになる。
大きな成功の代償は10年以上もの期間、彼を世捨て人にさせてしまったわけだ。
3rd・Black Messiahからのおすすめ曲
そして15年間の沈黙を破って2014年に発表された3rdアルバム、ブラック・メサイア。
ビルボードチャートでは登場週に第5位。グラミーのR&B部門も取ったし、最優秀アルバムにもノミネートされた、まさにディアンジェロ復活が現実のものになった作品。
発売がいきなりだったし、そのめちゃくちゃな話題性に関しては冒頭に書いた通り。
内容に関しては…バンドサウンドとしてのトラックが増えた気がする。具体的にいうとギターが強い印象。
ディアンジェロはもともとマルチプレイヤーであるからして、ギタープレイなんかもお手の物だったのだが、やはりもともとは鍵盤の印象が強かった。ライブでもずっと鍵盤をプレイしていたわけだし。
そんなディアンジェロがギターに目覚めた(?)キッカケってのはなんだったのだろうか?
このブラック・メサイアってアルバムが、ジミヘンのホームスタジオである”エレクトリック・レディ・スタジオ”で製作されたこととなにか関係があるのかもしれない。
そんなわけで、ギターの存在感が大きくなったアルバムなので作品全体の肉付きは良くなったように思う。
逆に言えばソリッド感は減り、2ndのようなドロドロしたスリリングな感じは後退した。
イチロー個人の感想で言えば、ディアンジェロには、えも言われぬダーティーさを求めてしまうので、やはり昔のアルバムの方をよく聴いてしまうのだった。
まぁ筆者は鑑定眼のないインディージョーンズみたいな男であるからして、あまり私の意見を参考にしないでほしい。
っていうかこれはもう、歴史的なフルアルバムを作ってしまったアーティスト全般が抱えるジレンマみたいなものではなかろうか。
Voodooってアルバムは、そのくらい世界全体のリスナーに衝撃を与えてしまった作品だったわけだし、とりわけその傾向は強い。
ここまで書いてきて、ここまで聴いてきて、ようやく冒頭の疑問。
「みんなディアンジェロってさわぐけどさ〜……」
の答えがうっすらと見えてくる。そうだよね。そんなアーティストが15年ぶりに新譜を出すってなったら、そりゃぁ大騒ぎにもなるよね。
伝説的なアーティストってのは新譜が出ると過去との比較話に持ちきりになるけれど、単純に1つの作品として聴いてみても、とても魅力的なアルバムであることがわかると思う。
この記事で何度も書いているように、プリンスからの影響も色濃いし、以前取り扱った伝説のファンクバンド・スライの後期のダークな感じなんかもすごく入っている気がする。
JBのワンコード一発勝負みたいなトラックもあるし、マーヴィン・ゲイよろしくコーラスワークも健在。ジミヘンのサイケデリック・ロック感もディアンジェロの音楽性に含んでいいと思う。
この辺のブラックミュージックのレガシーをまとめて煮込んだものがこのアルバムになっているとの理解で間違いなさそうだ。
そういう意味で言えば、3作品の中でも一番バランスが取れているアルバムなのかも。
ディアンジェロの凄さとおすすめ曲6選・伝説の考察【まとめ】
今日は遅ればせながら大好きなディアンジェロについてとんでもない量の文章を書いてきました。
これ。ここまでついてきてくれた人おるんかな?ディアンジェロ。めっちゃいいよ…大好き。
この記事は流し読みでも構わないから、どうかこの人のトラックに興味を持ってみてほしい。
ここで紹介してきた3作品の他にも、実はライブアルバムとか他のアーティストとのコラボとか…音源自体はまだまだたくさんあるんだよね。
でもこのへんにしておかないと、もう本当にいつ完成するかわからんこの記事。ブログ界のサグラダファミリアなんかになりとぅないんじゃ。わしは。
いろいろ書いてきたけれど毎回思うのは、音楽を紹介している以上、テキストよりも音源を聴いてもらいたいってことだ。
本当に素晴らしいと自分で思う音楽しか紹介してきてないから、余計にそう思ってしまう。
とはいえ、まぁちょっとこの記事はディアンジェロを神格化しすぎているかもしれない。でも本当にこの人の音楽は奥行きがすごい。
とにかくサウンドがあり得ない。音の配置から各楽器の響き。そのどれもが革新的で刺激的だった。
他のミュージシャンではとうていあり得ないミステイクのようなグルーブ感もそうだ。いつの間にか泥に足を取られているように頭から離れない。
これを狙ってやっているのだとしたらヤバすぎる。後進に与えた影響は、ほんとうに計り知れないものがある。
スペシャルとはこういうことなのだ。圧倒的に他と違うということなのだ。イチローはディアンジェロの音楽を聴いて、毎回そんなことを思ってしまう。
2014年。当時のブームに乗り切れない自分を迎えに行くための記事だったけれど、やっぱり俺はまだまだだな。言語化できないことばっかりだ。
ディアンジェロ。やっぱりこの男。底が知れない。
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