氷菓・考察その2〜クドリャフカの順番・遠まわりする雛〜【ネタバレ・あらすじ】

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こういった人向けの記事です。10分ほどで読める文章量。

この記事を書いてる人・イチロー

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目次

氷菓・考察その2〜クドリャフカの順番・遠まわりする雛〜【ネタバレ・あらすじ】

こんばんわ。PA(舞台音響)ブロガーのイチローです。

今日はこの前書いた”古典部シリーズ”の続きですね。

その1では後半完全に眠くなってしまって、よくわからないキモオタが書いたような文章になってしまいましたね。

今回は懲りずに、古典部シリーズ第3弾”クドリャフカの順番”と第4弾”遠まわりする雛”について書いていこうと思います。

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『氷菓』(ひょうか)は、2001年11月に刊行された米澤穂信の推理小説。

2012年にテレビアニメ化。2017年11月3日に実写映画公開。

Wikipediaより/©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会
著:米澤 穂信
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クドリャフカの順番のエピソード考察・あらすじ

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

神山高校の最大イベントである文化祭のお話。古典部は手違いで、出品する文集『氷菓』を大量に作りすぎてしまった。文集を売るため方々に奔走する古典部。大量の在庫に悩みつつも文化祭は進む。そんな中、校内では「十文字」という怪盗が犯行声明を残して各部活から物品を盗んでいくという不思議な連続事件が起きていた。古典部は、この事件の最後のターゲットが自らであるとアピールすることによって知名度を上げて文集を売り払おうと画策する。そんな中、奉太郎は偶然入手した同人マンガから事件の謎を紐解き始める。

“クドリャフカの順番”は学園を舞台にした古典部シリーズには欠かせない”文化祭回”です。

「カンヤ祭の由来を解き明かした」文集”氷菓”を引っさげて文化祭に臨む古典部ですが、手違いにより200部も作ってしまった。

確認を怠った自分を責める伊原だが、他にもなんだか悩んでいる様子。

古典部シリーズ第6弾収録の”わたしたちの伝説の一冊”にも繋がる内容であることから、このエピソードの影の主役は伊原なのかもしれない。

眠れない夜

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

神山高校文化祭・通称”カンヤ祭”の前日の夜。古典部の部員たちはそれぞれの思いを抱えながら、各々眠れない夜を過ごしていた。

各々眠れない・・と書いたが里志は楽しみで眠れないだけで、奉太郎はただの夜更かし。

えると伊原は発行部数が200になってしまった”氷菓”のことを懸念して、文化祭の前日の夜を過ごしていた。

米澤穂信さんの文体は、日常の模写でも美しく読んでいて飽きませんね〜。

小説の”まくら”になるような序章の書き方にもセンスを感じます。

ちなみに奉太郎が姉からもらう万年筆はアニメ版だと文化祭当日になっていますが、小説版だと前日の夜にもらってます。

このくらいの細かい違いはアニメ・漫画・小説で割とあるので、発見すると結構楽しい。

文化祭・1日目

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

文化祭初日。古典部のメンバーはそれぞれ文集を多く売るために画策する。えるは文集を多く売るため売場増やそうと総務委員会や壁新聞部との交渉に臨む。里志は文化祭のイベントに出場するなかで、文集の宣伝を担当。そして奉太郎は実利を兼ねた店番を進んで買って出る。文化祭が進んでいく中で、古典部メンバーはそれぞれが不思議な事件に出くわすことになる。奉太郎はアカペラ部での異変、えるは占い研究会の異変、里志は囲碁部での異変。それぞれの部活で”価値の無いものの盗難”が相次いでいた。そのころ漫研の用事に出席中の伊原は、部活内のリーダー的存在・河内と意見を対立させていた。対立した問題で河内を納得させるため、前年のカンヤ祭でひっそりと売られていた漫画「夕べには骸に」を持ってくると約束する。

まだ事件に共通性が見出されていない段階の文化祭初日は各々が個人の思惑で行動。

この後の”十文字事件”のカギになる伏線が各所に散りばめられる段階のお話ですね。

文集を売るために頑張りたいのに、いろいろな誘惑に負けて文化祭を普通に楽しんじゃうえるたそかわいいよえるたそ。

この段階では伊原の言葉としてしか出てこない「夕べには骸に」が”クドリャフカの順番”の中では非常に重要な要素になっています。

だから古典部のことを気に掛けながらも漫研に出席する伊原は、今回のエピソードの中でとっても重要な存在だったわけですね。

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©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

文化祭・2日目

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

事情があり「夕べには骸に」を持ってこれなかった伊原だが、河内は特別な非難はしなかった。一方、2-F組に文集の販売を依頼したえるは、了承した入須に「人への有効な物の頼み方」を教えてもらう。その後、里志・える・伊原はお料理研究会主催の料理バトルに参加。奉太郎のファインプレイもあり見事優勝し古典部のPRを果たすが、その中で古典部メンバーは文化祭で相次いでいた盗難事件に出くわすことになる。“お料理研”から”おたま”(伊原が使う予定だった)が盗まれていたことが判明して、このことがきっかけになり”十文字事件”が神山高校全体に知れ渡ることに。奉太郎は古典部の文集を捌けさせるために”十文字事件”のターゲットについて思いを巡らせる。犯行の法則性を見抜いた奉太郎は「こ」が頭文字である古典部が最後のターゲットになる可能性が低くないと推察。それをネタにえるは方々に文集を宣伝することになり、かたや奉太郎が今回の事件に不向きだと考えた里志は自らの手で怪盗を捕まえるため奔走。一方、伊原は漫研の雰囲気に耐えられなくなってドロップアウト。フォローしにきた部長の湯浅に「夕べには骸に」の原作者が河内の友達である”安城春菜”だと聞かされる。

いよいよ”十文字事件”が表面化してきてミステリーらしくなってくる回ですね。

古典部メンバーそれぞれの動きが奉太郎にヒントを与えて怪盗を割り出すヒントになっていきます。

その他”十文字事件”とは別視点でも古典部メンバーそれぞれの繊細な心の動きを読み取れる面白い回。

える → 今後の将来を左右する「経営的戦略眼」への諦めのきっかけになる。(”遠まわりする雛”でその思いが語られる)

里志 → 奉太郎への「期待」する気持ちと、それを良しとしない自分の思いの矛盾・ジレンマ。(事件解決後その述懐シーンあり)

伊原 → 先輩とのやりとり・漫画への思いの確認は最終的に漫研を抜けるための伏線になる。(”わたしたちの伝説の一冊”に繋がっていく)

この辺も小説版を読むとそれぞれの詳しい心情を知ることができる。

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

文化祭・3日目

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

各々の悩みは解決せずに、結局眠れない夜を過ごした古典部メンバーの文化祭最終日。校内で噂になっている怪盗を捕まえようと里志を含む野次馬探偵たちが現場を張り込む。しかし次のターゲットのグローバルアクトクラブは怪盗に無視され、里志(とその他大勢)は煙に巻かれる。そのころ奉太郎は訪ねてきた姉・供恵からこの事件の鍵となる「夕べには骸に」を受け取る。偶然手に入れた同人漫画だったが、そのクオリティの高さに驚くと共にあとがきに書かれた「クドリャフカの順番」という単語と「クリスティの超有名作を一ひねり二ひねりできないか企んでいる」という作者の言葉に今回の事件との関連性を見出す。その後、えるの観察力によって「夕べには骸に」の絵が生徒会長の陸山(くがやま)の物であることが判明。奉太郎の中で”十文字事件”と”夕べには骸に”と”文集の多売”が一直線につながる。

奉太郎が”怪盗十文字”に迫るシーンは改めて読んでもシビれますね〜。

文化祭の3日間に及ぶ伏線の数々が回収される場面は、本当にきもてぃいです。マジで。

それでも爽快感だけでなくて、里志の奉太郎へ対する思いだったり、伊原の先輩へ対する思いだったりがすごくわかりみが深いです。

なにせ僕も読者の多くも、奉太郎のような超然とした人間ではないのだから。

(隣人をただ愛することは困難だし、自己的な正しさで他人を傷つけてしまうことは誰しもが経験するところだろう)

里志・える・伊原、それに入須・河内・犯人までもが口にした「期待」というワードは”クドリャフカの順番”の裏テーマだったのではないでしょうか。

えるの中では”十文字事件”は未解決のままで終わるが(奉太郎がちょっとアレな手段をとって文集を捌く結果となったため事件の詳細は伏せられている)その後の打ち上げでどのように奉太郎が説明したのか「わたし、気になります」って感じだ。

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

遠回りする雛のエピソード考察・あらすじ〜その他短編〜

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

古典部の4人の距離感の変化・心情の変化を感じることができる古典部シリーズ第4弾”遠まわりする雛”ですね。

アニメの最終話になっているエピソードも収録されている、古典部シリーズの中でも人気の短編集です。

アニメ版や漫画版の中では長編のエピソードの合間に挟まれたりしていました。

というか小説的には”氷菓”・”愚者のエンドロール”・”クドリャフカの順番”の補足のような意味付けがあるのかも。

(短編という性質上、時系列が前後するのは仕方ないのかもしれない)

単純に古典部のことを時系列順に知りたいのであれば、やはりアニメや漫画の方が手っ取り早いのかもしれません。

短編・やるべきことなら手短に

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奉太郎が古典部に入部した4月。宿題を家に忘れてしまい放課後教室で宿題に手を付ける奉太郎は、里志から音楽室で起こった「神山高校七不思議 その二」の話を聞かされる。その後、えるが登場。しかし話題は奉太郎により仕向けられた「神山高校にもあった七不思議 その一」の「女郎蜘蛛の会」の勧誘メモの話に誘導される。奉太郎の思惑通り、えるが勧誘メモの在処に興味を示し奉太郎、える、里志は勧誘メモ探しを行うことに。奉太郎は自分の省エネ主義をえるから守るために「不思議を以って不思議を制す」ことを試みるのだった。

アニメの第1話に収録されている”やるべきことなら手短に”ですね。

この話は「今日の屈託は意外と高くつくかもしれない」と語る里志の言葉に集約されていると思う。

小説版のタイミングであればこの言葉の意味が腑に落ちると思うが、アニメの第1話で言われてもなかなか理解しづらい。

先述した言葉と「このことを貸しにするつもりはないけど千反田さんはどうかな?」と語る里志は、友人である奉太郎をある意味本人より理解していたのではないだろうか。

このエピソードで生まれてしまった奉太郎の心理的な負い目は、里志に対しては”手作りチョコレート事件”で。

えるに対しては”長い休日”で昇華される。

というかそもそもこの話の推理こそが”奉太郎のえるに対する思い”の答えとして扱われてもいいような気さえする。

だって、えるの好奇心につきあうこと自体を自身の信条である「やるべきこと」に含めてしまっているのだから。

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短編・大罪を犯す

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古典部が4人になって6月ごろの授業中。奉太郎の隣のクラスのえるが数学教師の尾道と激しく言い争いをしているのを授業中に耳にする。その放課後、里志と摩耶花の痴話喧嘩を見てそのことを思い出し、奉太郎が尾道との一件についてえるに尋ねる。えるはその口論の始まりとして、尾道がクラスで習っている範囲よりも先のポイントで授業を始めてしまい、それに気づかないまま授業内容がわからない生徒たちを怒りはじめたとのこと。尾道がなぜ授業範囲を間違えてしまったのかが気になっていたえる。その話から奉太郎はなぜ尾道のミスの理由を推理することになる。

いかもに短編らしいライトな日常の謎を扱った”大罪を犯す”ですね。

謎自体は小文字のアルファベットの”a”と”d”を間違えたのでは?っていう話なのですが、

七つの大罪の話から派生する古典部員それぞれの哲学などが面白い。

えるは「欲がなければ家族を養えず、嫉妬がなければ技術革新もなく、怒れない人は好きなものもない」と欲望の側面を語る。

奉太郎は「俺が千反田を知った気でいるのは傲慢というやつだ」と回想し「怠惰のみで十分だ」と落ち着く。

このエピソードのように古典部の4人がどのようにして日常を過ごして距離感や関係性が変わっていくのかがわかる短編種が”遠まわりする雛”なので、

そういった意味で言えばこの短編集を象徴するような話なのかもしれません。みんな遠まわりしてるな〜。

(冒頭の里志・伊原のケンカや、える・奉太郎のやりとりなど)

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

短編・正体見たり

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古典部4人の夏休み。“氷菓事件”の解決を祝して、えるが温泉合宿を提案し、伊原の親戚が経営する民宿「青山荘」に宿泊することに。しかし夕食の後、車酔いの残る奉太郎は温泉に入り湯あたりを起こしてしまう。その夜、民宿の娘の梨絵から「青山荘」にまつわる怪談話を聞く里志・える・伊原。次の日の朝、えると伊原が「怪談の話にあった部屋の窓に首吊りの影を見た」と怯えた様子で話す。奉太郎とえるは影の正体を確かめるべく、調査・推理を始める。

学園話で外せないのが合宿回ですよね。

古典部の4人が打ち上げを兼ねて温泉旅行に行くお話です。

残念ながら奉太郎は温泉に浸かりすぎて伸びてしまいますが、要所要所で表現されるえるの艶やかさも奉太郎を寝込ませる一因になりました。

先述した通りの経緯で「首吊りの影」の正体を推理することになる奉太郎。

ゆっくり1人で考え事をするために、またもや温泉に浸かりに行きます。

推理の進捗具合が気になるえるは、奉太郎と行動を共にし「一緒に出ましょうね」と約束する。かわいい。

やがて奉太郎の推理により真相を知ったえるは、兄妹・姉妹の関係性も「枯れ尾花」なのかと落胆する。

アニメ版だとこのあと仲良さそうに遊ぶ姉妹の描写が入り、物語は温かみを帯びて終了する。

一人っ子のえると、姉のいる奉太郎とで兄妹・姉妹の認識の違いが出てくる面白い話。

個人的にこのお話は、家族愛の否定ということではなく、家族というコミュニティの中においての個々の多様性の話なのだと考える。

各々の違いを認識・理解するところからコミュニケーションは始まるべきだし”遠まわりする雛”にこの話が収録されたことを考えると、

奉太郎とえるのお互いへの理解の一歩として描かれたのではないのだろうか。考えすぎだろうか。

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短編・心あたりのある者は

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秋口のとある放課後。2人しかいない古典部の部室で、えるから推理力の誉め殺しにある奉太郎。えるの賞賛の否定のために奉太郎は、”状況には簡単に推論をつけられるが正解か否かは確率・運の問題でしかない”ことを立証するゲームを提案。えるは好奇心を持ってそのゲームに参加する。ゲームに使う状況を2人で考えていると、慌ただしく校内放送が入る。「10月31日、駅前の巧文堂で買い物をした心当たりのある者は、至急、職員室柴崎のところまで来なさい」奉太郎とえるはこの校内放送が行われた経緯・意図を推察していくことにするが、途中からなんだか「キナの匂い」がしてくる不穏な空気が流れ始める。

“9マイルは遠すぎる”のオマージュ的な作品である”心当たりのある者は”は部室という狭い空間で、しかも2人という少人数で進んでいく非常にソリッドでミニマムなエピソード。

でも個人的にはこんなお話が”古典部シリーズ”っぽくてすごく好きです。

奉太郎は教頭が呼びかけている生徒が「事件の容疑者」として、しかも「緊急を要する」案件での呼び出しだと推察。

話が大きくなってきて不安を感じるえるが「カタストロフです!」と叫ぶシーンも。

しかし、そもそもこの話は奉太郎の”筋が通っているこじつけ”を披露する回なのでカタストロフだろうがビーフストロガノフだろうが本筋にあまり関係がない。

(それでも”瓢箪から駒”のごとく次の日の朝刊で奉太郎の推論の正しさが立証される描写も)

2人は存分に言葉遊びを満喫し、最終的には「なんの証明のための推論だったのか」お互いに忘れてしまう。

このエピソードも遠まわりする2人の関係を見つめた他愛のない1日なのだろう。

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

短編・あきましておめでとう

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初詣・千反田家のおつかい・巫女のバイトをしている伊原に会う・えるが着物を奉太郎に見せたいこのような条件が重なり、正月、えると奉太郎は荒楠神社にいた。一通り用事を終えた奉太郎とえるは、忙しそうな神主の娘・十文字かほの手伝いのため蔵から酒粕を取ってくることに。しかし蔵と間違え納屋に入ってしまった2人。なんとそのまま通りすがりのおじさんに施錠され閉じ込められてしまう。

2人の関係が親密になってきたことがわかるドキドキ回”あきましておめでとう”ですね。

ジャック・フットレルの”13号独房の問題”のように密室から限られたアイテムを使って絶望的状況を打破するミステリファン垂涎のエピソード・・

嘘です。単純に叫べば簡単に助かるんだけど

“2人の関係を誤解されても・・いや別に全然嫌だとかそんなんじゃないんですよ?別の場所だったらそんなの気にしないんですよ?でもほらお正月から噂になってもアレでしょう?いやでも本当に寒くなってきましたし嫌とかでは全然ないんで本当に”

みたいなやりとりが友達以上恋人未満の高校生男女2人によって密室の暗がりで行われる萌回です。

“伊原か里志のみに気付いてもらう”という制約や”極寒・密室・限られたアイテム”など厳しい条件が重なったために苦労する奉太郎ですが、

最終的には金ヶ崎の戦いでの織田信長とお市の逸話である”袋の鼠”にならって里志にメッセージを送ることに成功。

名代として来ているえるの名誉を見事に守った。

うーん。個人的には考察とかそんなことよりも、とにかくえるが可愛い回。

「見せびらかしにきました〜」とかなんだよもう。

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短編・手作りチョコレート事件

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バレンタインデーの雪の降る放課後。古典部の部室に置いてあった伊原の手作りチョコが盗まれる事件が起こる。奉太郎・える・里志は伊原がこのことを知る前にチョコの捜索をすることになる。しかし発見には至らず、結局伊原にそのことが伝わり本人はショックを受け帰ってしまう。短時間であるが戸締りを怠ったせいだと自分を責め、天文部が犯人と決めつけ無理やりチョコの奪還を試るえる。奉太郎は、そんなえるを引き止め「伊原のチョコは今日のうちに里志に渡す。絶対の自信がある」と伝える。安心して帰るよう促されたえるは奉太郎を信じて頭を下げ家路につく。

なかなか言葉にして説明するのが困難な男心を描いた”手作りチョコレート事件”ですね。

ゲームセンターでの中学時代の回想や、解決後の述懐など、このエピソードの主役はもちろん里志。

“こだわる”ことをやめて”こだわらないことにこだわる”ようになった里志は、伊原に”こだわる”ようになることで自分が退化してしまうことを怖れていた。

自らの”こだわり”に伊原を巻き込んでもいいのだろうか?

里志がためらうのはあくまでも伊原のためだった。

この時、奉太郎は省エネを掲げ”薔薇色”を拒む自分を里志と対比し、俯瞰する。

奉太郎は思う「それは似て非なるものだ」と。

奉太郎はこの事件で伊原だけが泣いたのなら、おそらくほとんど自主的な行動を起こさなかっただろう。

この事件を丁寧に扱っていたのは他の誰でもない”えるが巻き込まれ・傷ついた”からだと考える。

いつかの「女郎蜘蛛の会」での出来事を負い目に感じているのも”えるに嘘をついた”という事実が奉太郎の誠実さを責めるからだ。

その誠実さは里志が伊原に向けている思いと「似て非なるもの」になるくらいには自覚し始める。

まったく、遠回りな主人公である。

この事件解決後も里志と奉太郎は基本的にお互いに全てをさらけ出すようなことはしない。

この2人もまた”遠まわり”している関係なのだろう。もちろん里志と伊原も十分すぎるほどに。

“遠まわりする雛”に収録されている短編の中でも、シリアスな内容のエピソードでした。

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

短編・遠まわりする雛

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

高校二年生になる直前の春休み、えるからの連絡で傘持ちの代役を頼まれる奉太郎。指定場所の神社に到着し、祭りの準備に追われる大人たちの中で1人時間を潰すことに。そんな中、祭りの道中に通るはずだった”長久橋”が工事によって使えないことが判明する。事前に工事を止める連絡を工事業者にしたにも関わらず、その後に何者かによって工事の許可が下ろされたことが原因だった。戦慄が走った社務所の中で大人たちが会議を開く。ルートをさらに下った先の”遠路橋”を通る案も出るが、大人たちは躊躇する。それでも、えるの機転のおかげで”遠路橋”を通れることになって祭りは無事に執り行われた。その中で、雛役のえるの晴れ姿を見た奉太郎は、自身の信条を揺るがすえるへの気持ちに気付くことになる。祭りの後、えるはなぜ連絡の行き違いが生じたのか奉太郎に疑問をぶつけ、互いに答え合わせをする。

アニメ版では最終話になる”遠まわりする雛”です。

最終話だからなのか小説版にはない演出として、奉太郎と入須・奉太郎と伊原の会話がそれぞれ挿入されています。

(入須は文化祭の件を詫び、伊原はバレンタインの件の礼を言う)

文化祭での自分の立ち回りを振り返り「経営的戦略眼」を諦めたことを奉太郎に告げるえる。

それを自分が修めるのはどうだろうか?と考える奉太郎。しかし言葉にはならない。

妨害によって遠まわりさせられた雛と、えると奉太郎の関係性を表したダブルミーニングである”遠まわりする雛”は、ファンにも人気の名エピソードです。エモい〜。

奉太郎はこのお話の中でえるに対する自分の思いにようやく気付き、伊原からバレンタインチョコの受け取りを拒んだ里志の気持ちを理解するに至る。

©️米澤穂信・角川書店・神山高校古典部OB会

氷菓・考察その2〜クドリャフカの順番・遠まわりする雛〜【まとめ】

ということで”古典部シリーズ”ネタバレ考察その2ってことで小説版に沿って”クドリャフカの順番”と”遠まわりする雛”についてまとめて考察してきました。

気軽な気持ちで書き始めたけど、なかなかに長丁場になってしまった。

次は”ふたりの距離の概算”と”いまさら翼といわれても”についてちょっとまとめたり、フワフワっと考察したりしようと思います。

今日も最後まで付き合ってもらってありがとうございました。

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